築100年の古民家リノベーション 第四弾:内装編

築100年の古民家リノベーション 第四弾:内装編

みなさん、こんにちは。コマツ建築工房の棟梁、小松です。

高根町の築100年古民家リノベーションも、前回の構造工事を終え、いよいよ内装工事の段階まで進んできました。今回は、古民家の趣を大切にしながら、現代の暮らしやすさを実現していく内装工事の様子をお伝えします。

100年前の木材が新たな命を吹き込まれる

欅(けやき)の床材が玄関板に生まれ変わる

この古民家で特に印象に残っているのが、古材の再利用です。

縁側で100年間使われてきた欅の床材。その美しい木目と風合いは、長い時間をかけて生まれた味わい深いものです。これを捨てるなんてもったいない。そこで、玄関の床板材として再利用することにしました。

欅の古材を磨き、サイズを調整したのち玄関に張り込んでいきます。

一枚一枚丁寧に加工していく作業は、貴重な材料だからこその慎重さが必要です。最後は施主さん自らオイルフィニッシュで仕上げる予定。100年の歴史を刻んだ木材が、これからまた新しい100年を迎えるわけです。

床の間の木材が机と本棚に

同じく床の間に使われていた欅の床板も、捨てるには惜しい逸品でした。
こちらの欅板は寝室の机の天板と棚板として利用することにします。

削りの作業を進めると、木の内側から美しい木目が現れてきます。100年以上の時を経た無垢板だからこその重厚感。市販の家具では決して出せない味わいです。

本棚の棚板にも同じ材を使用。古民家に住むということは、こうした歴史ある素材と共に暮らすということなんだなと、改めて実感します。

北杜市の厳しい冬に備えて

断熱材は妥協なく

山梨県北杜市の冬は本当に寒い。

だからこそ、断熱工事には特に力を入れました。2階の天井裏には高性能の断熱材をびっしりと。同様に家中をしっかりと断熱対策したうえで施工していきます。

使用したのは寒冷地仕様の密度の高い断熱材。古民家の弱点である「寒さ」を克服するための重要な工程です。壁にも同じように高性能断熱材を充填。これで冬の寒さも怖くありません。

吹き抜けリビングの誕生

梁を外して開放的な空間に

リビングの天井を高くするため、思い切った決断をしました。

中央にあった梁を取り除くことで、広々とした吹き抜け空間を確保しました。古い柱と新しい構造材を金物でしっかりと連結し、家の強度も確保したうえで開放感と安全性の両立を実現しました。

この吹き抜けによって、リビング全体が明るく風通しの良い空間に。古民家の重厚感を残しながら、現代的な開放感も手に入れることができました。

職人技が光る和室づくり

先代棟梁の匠の技

和室の施工には、私の父である先代の棟梁が存分にその技を発揮してくれました。

床を張り、巾木を取り付ける姿は、まさに職人の鑑。長年培った技術が、一つ一つの作業に現れています。

天井には焼き杉を使用。これが和室に独特の風格を与えてくれます。黒く焼かれた杉板が醸し出す重厚感は、和室ならではの魅力です。

施主さんと一緒に畳の「へり」の色を選ぶ時間も楽しいひととき。こうした細部へのこだわりが、住まいへの愛着を生むのだと思います。

現代の暮らしに欠かせない設備工事

電気配線の苦労

古民家リノベーションで意外と大変なのが電気配線です。

壁が少ない古民家では、配線を通すルートが限られます。電気屋さんも頭を悩ませながら、最適なルートを探していく。これも古民家ならではの難しさですね。

キッチンと造作家具

キッチンには最新のシステムキッチンを導入。でも、食器戸棚は私の手による作り付け。既製品にはないサイズ感で、使い勝手も抜群です。

玄関まわりの工夫

木製建具と石の敷居

玄関には、あえてサッシではなく木製建具を選びました。

石の敷居との組み合わせは、失敗が許されない緊張感のある作業。でも、完成した姿を見れば、その苦労も報われます。古民家の風情を大切にした選択でした。

こだわりの土間仕上げ

玄関の土間コンクリート打ちは、寒冷地ならではの配慮が必要です。

なるべく暖かい日を選んで施工。強度を確保するため、しっかりメッシュを入れて。

さらに内側に板を貼ることで、コンクリートに木目の模様をつける工夫も。細部まで古民家の雰囲気を大切にしています。

玄関上がりにも5メートルの一本物の檜の敷居框(しきいかまち)を使用するなど、素材にもこだわりました。

最後に選んだタイルも、古民家の雰囲気に合うものを厳選。目地打ちまで丁寧に仕上げました。

書院の設置という挑戦

玄関前に書院を収めるため、梁をくり抜く作業も行いました。
書院という言葉はあまり馴染みがないかもしれませんが↓これが完成後の書院です。
書院とは昔の家屋の床間などに設置されていた読み書きをするための机のようなものです。

解体時に家屋にあった書院を保管しておき、再生して玄関前に設置します。

梁に書院の幅に溝を彫り、ここに固定します。
これは非常に繊細な作業で、ミリ単位の精度が求められます。

こちらは完成後の書院。
素材がしっかりしているため、美しく再生できました。

でも、こうした伝統的な要素を残すことが、古民家リノベーションの醍醐味でもあるのです。

一歩ずつ完成に向かって

階段も、登りやすさを考えて一段一段を低く設計。

内装工事を進めながら感じるのは、100年前の職人さんたちの技術の高さ。そして、その技術を受け継ぎながら、現代の暮らしに合わせて進化させていく。それが私たち現代の職人の使命だと思っています。

古民家リノベーションは、過去と現在、そして未来をつなぐ仕事。次回は、いよいよ完成した古民家をご紹介します。

100年の歴史を持つこの家が、新しい家族と共に、また新たな100年を歩み始める。その瞬間が、もうすぐそこまで来ています。