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築100年の古民家リノベーション 第三弾:屋根 ・壁・構造工事編

みなさん、こんにちは。
コマツ建築工房の2代目棟梁、小松です。
高根町の黒倉様邸リノベーションプロジェクト、第三弾をお届けします。
前回の基礎・補強作業に続き、今回は屋根と壁の構造工事について紹介します。
屋根工事の始まり
基礎工事を終え、いよいよ屋根の骨組みに取り掛かります。
まずは安全に作業するための足場を設置。この足場があることで、細部まで丁寧な仕事ができます。
防腐・害虫対策
屋根と並行して床下も仕上げていきます。
土間周りには、L型の防蟻断熱材を一周設置。
シロアリなどの害虫の侵入をしっかりと防いでくれます。特に黒倉様邸の建つこの辺りは山間部のため害虫などが多いところです。気が抜けません。
しっかりと密閉させて処理は完了。
また、外回りの防腐処理も欠かせません。
土台板とコンクリートの間は1cmほど浮かせ、隙間にコーキング処理を施すことで腐食と害虫対策を徹底しています。木造の建物にとって雨などの水分は大敵。家を長持ちさせるためにも土間板が水分を吸収しないようしっかりと対策します。
屋根の構造材と施工の工夫
今回の案件では、すでに茅葺き屋根を撤去してしまいましたので屋根はゼロからのスタートになります。残っている柱や梁を利用して構造造りからスタートします。
下の写真は茅葺き屋根を撤去した後の黒倉様邸の様子。
ここから屋根・壁を作っていきます。
古材と新材の融合
利用できる古い梁は残し、腐食や強度に問題がある梁は撤去します。
古材と新材を併用して構造を組むのですが、残っている梁すべての高さが異なるため、調整に調整を重ねた非常に手間のかかる作業となりました。
大黒柱の痛んだ先端をカット。
ここに屋根の構造材を載せていきます。
古材と新材を組み合わせる作業は困難を極めますが、同時に特別な体験でもあります。
まるで100年前にこの家を建てた先人の大工たちと時空を超えて対話しているかのように感じることがあります。現代の我々は彼らの技に応えることができているのか?
古材と新材を併用する際には、古い木材を切って「アゴ」を作り、そこに新しい木材を載せることで強度を向上させています。
古民家リノベーションならではの調整作業
外壁を貼るために歪んだ梁を平らにする作業は、古民家リノベーションならではの工程です。歪んだ場所には調整材を使い、水平を整えていきます。
新築では当たり前の寸法の統一が、100年を経た家では難しのです。
柱と梁がずれているように見える箇所もありますが、これは梁が曲がっているため、正しい水平を取るためにあえてずらして設置しているのです。
屋根と軒を作ります
さぁ、いよいよ屋根造りです。
今回は屋根の下にもう一つ1300mmの軒先を作ります。
これは壁板を風雨から守る役割もありますが、軒先の長い家は何より風格が出ます。
これまでにもコマツ建築工房では、軒先の長い家をたくさん作ってきました。
屋根材と施工の工夫
今回の屋根材には、耐久性に優れたガルバリウム鋼板を採用しました。
軒の屋根はガルバリウムを縦張りで仕上げることで、雨水の流れをスムーズにします。
屋根部分のガルバリウム鋼板は、上から下まですべて同じ寸法で美しく割り込むよう計算して施工し、見た目の美しさにもこだわっています。
屋根の機能性を高める工夫
屋根のトップには換気口を設置します。
この換気システムは、建物にとって非常に重要な役割を果たします。
下からの空気を取り込み籠った空気を外に逃す「棟換気」により、夏は熱い空気を、冬は寒い空気を効率よく排出できるのです。
北杜市は雪の多い地域。
そのため、雪止めは3段構えで設置しました。
雨樋のない家
実はこの家、あえて雨樋を付けていません。
周囲に木が多く、落ち葉などで詰まってしまうのを防ぐためです。その代わり、軒先は1300mmと十分な長さを確保。水はねを抑える工夫を施しています。
また、軒を長くすることで雨や雪による壁板の痛みを和らげる効果があります。
細かな配慮が将来のメンテナンス性を左右しますので、きっちり細部まで気を配ります。
軒先の裏は、垂木など木の素材を美しく見せるために板張りで対応。
近年の住宅では軒裏を囲ってしまうことが多いですが、あえて木の質感を見せることで、伝統的な美しさを引き出しています。
壁板もクネった梁に合わせて高さを調整しながら、一枚一枚貼っていきます。
古民家リノベーションの難しさと喜び
屋根の隅木や梁組みは、墨付けから加工まですべて自社で行っています。
古民家は場所によって寸法がバラバラなため、現場での調整が必須で手間のかかる作業が数多くあります。
しかし、この手間こそが、世界に一つだけの家を作り上げる喜びでもあります。
古いものを活かしながら、新しい技術を組み合わせる。その調和の中に、これからの100年を支える確かな構造が生まれていくのです。
初代棟梁の衰えない技術。
私もいまだに学ぶことの多い、生粋の職人です。
3代目棟梁となるであろう私の息子も現在、山梨県内の工務店で大工修行中です。
初代から受け継いだ技術をしっかりと継承できるよう、私もまだまだ成長しなければなりません。
頑張らねば!
リノベーションも残りわずか。
次回は生まれ変わった黒倉様邸をご覧いただく予定です。